高原の花々
清里高原、
飯盛山、八ヶ岳南麓牛首山

8月5〜6日猛暑の東京を離れて山梨県と長野県の県境にそびえる八ヶ岳南東山麓の清里高原、そして八ヶ岳取り付き口の真教寺尾根の牛首山へ高嶺の花を訪ねて来ました。
学生時代は北アルプスや白山に登っていましたが、勤めてからは機会もなく、35年ぶりの山登りでした。
一日目は、足慣らしで飯盛山へ、翌日は八ヶ岳最高峰の赤岳麓までの予定で出発しましたが牛首山山頂で雷雨に会い、引き返しました。下山途中でKEEP協会の自然観察林や施設を見学して帰りました。
2日間での走行距離約32Km、歩数約5万歩。減った体重1.8Kg(期待したほど減りませんでした)。
今後も山登りを続けていきます。

(赤い線が走破ルート)
(大きな地図はココをクリック)

清里(山梨県北杜市)
清里駅の標高が1276m。八ヶ岳南東山麓スロープの途中です。駅前はメルヘンチックな建物が並んでいますが、少し入るとバブルの頃に建てたと思われる廃屋が散見されます。テナント募集看板も目に付きました。

(清里駅前通りと時計塔)
 
清里といっても特に珍しい花があるわけでなく、平地で見られる花も多くあります。それでもきれいに見えるのは土壌や空気のせいでしょうか、それとも単なる転地効果でしょうか。

鵯花(ヒヨドリバナ)(牧場通り)  藤袴の仲間です。

丘虎の尾(オカトラノオ)(牧場通り  角虎の尾の仲間。

草藤(クサフジ) (牧場通り)

姫沙参(ヒメシャジン) (牧場通り)桔梗の仲間

  上溝桜(ウワミズザクラ)
    (萌木の村付近)

通常は4月頃咲く花ですが、涼しいせいでしょうか、今が満開でした。とても桜の一種とは思えない花の形です。
この付近では特に珍しい花でないようで、KEEP協会(後述)でも木に名前のプレートがつけられていませんでした。

牡丹蔓(ボタンヅル) (萌木の村付近)

松虫草(マツムシソウ) (駅前) 
この花は園芸種です。山野草も多くが園芸品種になっています。ペンションやレストランの前庭に植えられていました。
野生の花はこの後で・・・
   

飯盛山(長野県南牧村)

(清里から山頂を遠望)
メシモリヤマと読みます。標高1653メートルの低山です。
お椀にご飯を盛ったような形からでしょうか。私には若い女性の胸のように見えてなりません。昔から山の神っていうでしょ。
登山ルートは村内の野辺山駅からが一般的で、景色も良くまた道も整備されていますが、今回は清里から平沢地区を通って登りました。
登山口は清里ユースホステルの脇を通って、大門川へ降りてゆく下り坂から始まります。
最初に出迎えてくれたのが・・・

牛皮消(イケマ) 標高1250m付近

根に強い毒を持つこの草も薬草として食中毒や風邪薬に利用されます。また、若い葉は山菜として食用になります。
イケマはもともとアイヌ語で「神の足」「巨大な根」という意味で、アイヌの人々には霊力のある草として魔よけや呪術(トランス状態に入る)のために使われていました。

薬といえば、これも有名。胃腸病や便秘に効きます。
   現の証拠(ゲンノショウコ)標高1250m付近

藤空木(フジウツギ)標高1200m付近
この枝や葉にも毒があり、磨り潰して水に入れると魚が麻痺して浮いてきます。「酔魚草」とも呼ばれます。
   

谷の底は大門川。橋の下流に千ガ滝があります。ここで少し涼んで、英気をもらって出発です。

(この大門川は太平洋に流れますが、一つ山向こうの野辺山の西川は千曲川から日本海に注ぎます)
釣舟草(ツリフネソウ) 標高1200m付近

渓流などの水の多いところに咲きます。
保険金事件で有名な「鳥兜(トリカブト)の仲間ですが、
毒はありません。

花の根元(距といいます)が巻いています。

     
(平沢橋近く)   

平沢地区に入ると出迎えてくれたのは農家の庭先の
山百合(ヤマユリ)  標高1220m付近           藪甘草(ヤブカンゾウ) 標高1250m付近

放牧牛の防御柵を抜けると、いよいよ山道に入ります。最初は谷陰の薮道です。
夏の田村草(ナツノタムラソウ) 標高1300m付近

しそ科の花です。「田村草」という名は、しそ科以外にもアザミに似たキク科の花もあります。また『夏』に限らず「アキノタムラソウ」「ハルのタムラソウ」というのまで種々あります。

大根草(ダイコンソウ) 標高1300m付近

大根といってもアブラナ科の大根とは関係がありません。バラ科です。金鳳花と少し似ています。

薄暗い山道を歩いているとニュッと突き出すものが・・・チョットドキッとしますね。
姥百合(ウバユリ)  標高1350m付近    花が咲く頃、葉(歯)が落ちてしまうところから名づけられました。
  これは泊まったペンションで咲いていました。
  
園芸種は花実も多いようです。
      


この他にドキッとするのは・・・

     蝮草(マムシグサ)  標高1350m付近

実物には出会いたくないものです。
若い実ができています。この後、赤くなります。
幣手沙参(シデシャジン) 標高1400m付近
花弁が幣のように捩れています

藪道を登りきると少し開けたところにでました。ここの草花は陽光を浴びて伸びています。
下野(シモツケ) 標高1450m付近  木の花です 山萩(ヤマハギ) 標高1450m付近

乳茸刺(チダケサシ) 標高1450m付近

乳茸というキノコをこの茎に刺して持ち帰ったことから
名前がつけられたものですが、その乳茸がどういうもので
あるかは良くわかりません。
下界で6月頃咲くアスチルベ(決して「明日散るべ」ではありませんが)の仲間です。
吾亦紅(ワレモコウ) 標高1450m付近

そして稜線道に出ました。立派な案内板。

ここからは道も整備され、視界も開けたルートになります。晴れていれば、富士山、秩父連山、南アルプスそして八ヶ岳が一望できるのですが・・・生憎曇り空でした。
登山道と山頂

山母子(ヤマハハコ) 標高1500m付近

野薊
(ノアザミ) 標高1500m付近

川原撫子(カワラナデシコ) 標高1500m付近
  尾根道より眺める清里周辺
  
  八ヶ岳の稜線がくっきり見えます。

      松虫草(マツムシソウ) 標高1550m付近   園芸種と違って清楚です。
        

下野草(シモツケソウ) 標高1550m付近
これは下野と違い草です。

田村草
(タムラソウ) 標高1550m付近
薊の仲間。野薊との違いは葉に刺がありません。

金水引(キンミズヒキ) 標高1550m付近

嶺の薄雪草(ミネノウスユキソウ) 標高1550m付近

釣鐘人参
(ツリガネニンジン) 標高1550m付近 沙参(人参の中国語)と同じ桔梗の仲間です。

小鬼百合(コオニユリ)  標高1600m付近

顔剃菜(コウゾリナ)  標高1600m付近

糊空木(ノリウツギ) 標高1600m付近 

標高が低い薮道でも咲いていましたが、高度が高くなるに従い色合いが濃くなってくるようです。
鍔アジサイに似ているように空木といってもユキノシタ科でアジサイの仲間です。

草牡丹(クサボタン)  標高1600m付近
こんなところでも帰化植物のヒメジョンが・・・
   
ヒメジォンも後から来たハルジォンに圧倒されて、こんな高いところまで逃げ延びてきたようです。

頂上は間近。もうひと頑張り。

着きました! アレッ、標高が地図と違う・・・

10メートル足りません! 1,653mは隣の平沢山でした。
帰路も同じルートで帰りました。往復で4時間。

 
八ヶ岳赤岳南麓、牛首山(山梨県北杜市)
KEEP(Kiyosato Education Experience Project)協会のファームショップから眺めた赤岳と手前の牛首山。
この写真は帰路に撮ったものです。往路では山は雲の後でした。

清里駅から牛首山の頂上(2280m)まで、標高差1,000m(途中の300mはリフトを利用)、平面距離で18Kmを走破したことなります。

山蛍袋(ヤマホタルブクロ)清里の森 標高1400m
飯盛山でも咲いていました。このあたり一帯で咲きます。


蛍袋との違いは、顎の切れ込みが長い方が蛍袋
 (港区東宮御所)

捩花(ネジバナ)美し森 標高1450m付近 ランの仲間

浅間風露(アサマフウロ) 美し森 標高1500m付近

猪独活(シシウド) 美し森 標高1550m付近

四葉鵯(ヨツバヒヨドリ) 美し森 標高1550m付近
    付近の森は手入れの行き届いた針葉樹林です。            四葉鵯は藤袴とよく似ています。
         
  

透百合(スカシユリ) サンメドォズ 標高1600m付近
冬はスキー場ですが、夏の客寄せに百合を植えています。


ココからリフトで一挙に1900mの展望台へ。
行きは良い良い、帰りは・・・で、帰路は雷のため1時間以上足止めを食らいました。
九蓋草(クガイソウ)展望台 標高1900m付近
鋸草(ノコギリソウ)展望台 標高1900m付近

賽の河原で装備をチェックし、いよいよ牛首山の登りに取り掛かります。その前に一服。
立風露(タチフウロ) 賽の河原 標高1900m付近

岩沙参
(イワシャジン)賽の河原 標高1900m付近

深山沙参
(ミヤマシャジン)賽の河原 
靫草(ウツボグサ) 賽の河原 標高1900m付近

にゅっと頭をもたげているところが魚のうつぼに似ているからでしょうか。夏枯草(かごそう)ともいわれます。

始めは緩やかな笹原を行きますが、2000mを越えるあたりから急坂となります。
黄苑(キオン) 標高2000m付近 信濃弟切(シナノオトギリ) 標高2050m付近
  
未生柳に似ています。「弟切」の名はこの草から採れる秘薬の製法を漏らした弟を兄が切ったところから。

道はいよいよ険しく、霧が出て、雷も・・・

苔生す道にキノコあり。
 花笠茸(ハナガサタケ) 標高2100m付近
 
 食用です。癌にも聞くという話・・・で、栽培されています。

嘴塩釜(クチバシシオガマ) 標高2150m付近

上花弁の形が鳥の嘴に似ています。


手型千鳥(テガタチドリ)  標高2200m付近
蘭の仲間
蟹蝙蝠(カニコウモリ) 標高2250m付近

コウモリソウ属なのに葉が蟹の甲羅に似ているから名がついた変な花。コウモリソウというのは
 どこか蝙蝠に似ています。
 (四季の山野草HPから拝借)

牛首山山頂2280m。標識がないと山頂かどうか分かりません。
道標
山頂に着くと雨も一段と激しくなり、また雷も近くで光りました。安全第一でここで引き返しました。

帰路は同じルートを通って下山しましたが、美し森からKEEP協会の自然林を通って帰りました。
自然林ルート案内板           林の道           自然体験プログラム参加者たち
  
(映画「西の魔女が死んだ」の撮影地で、おばあさんの家もあります)

KEEP協会自然ふれあいセンター
KEEP協会は東京YMCAや聖路加病院の再建に尽力した米国人ポール・ラッシュ博士が1948年に、実践的なモデル農村コミュニティーづくりを目指して設立した団体。
施設内には清泉寮を中心とした宿泊・研修施設や自然を学ぶ山梨県立八ヶ岳自然ふれあいセンター(KEEP協会が管理受託)、搾乳体験ができるファームショップなどが広い自然林に囲まれて点在しています。やまねを観察できるミュージアムや5コースある自然体験プログラムなど充実した環境教育を提供しています。是非お立ち寄りを。私もこのHPに載せた花の名前をたくさん教えてもらいました。
URL:http://www.keep.or.jp/FORESTERS/furesen.htm

以上、2日間の清里・八ヶ岳山麓 自然と花紀行は無事終了。次回は八ヶ岳の2500m以上の花や南アルプスの花々にチャレンジしたいと思います。


「なに花な?」コーナー
今回も名前の分からない花がありました。ご存知でしたら教えてください。(写真をクリックすると拡大します)

@ A
なでしこの仲間のようですが・・・・
清里 牧場通り
 標高1250m付近
キク科の花です。
牛首山 
標高2150m付近
分かりました
@シャボンソウ<ソープ・ワート> 葉を揉むと泡が出て石鹸代わりになります。野田様からのご報告

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