無人(ボニン)島の春 小笠原・父島の花々

東京から南へ1000㎞、太平洋の西縁に浮かぶ小笠原諸島。3000万-4000万年前に海上に姿を現して以来、一度も大陸と陸続きになったことがなく、そして190年前までは、漂流民を除き誰も住んだことがなかった無人島。この「無人」の日本語読み(ブニンまたはムニン)から英語でBonin islandsと称される。外界と隔絶されたこの地に流れつき、幸運にも根付いた植物は環境に合わせて独自の進化を遂げ、固有種となってゆく。日本のガラパゴスである。自生する植物は約300種あるが、そのうち固有種は124種(1981年現在)と40%を占める。ボニン(bonin)の種小名を有する種は50種を超える。こうした独自の生態系、生物多様性が認められて2011年、日本としては4番目の世界自然遺産に登録された。自然遺産は世界に218件が登録されているが、域内に自然遺産を持つ首都は東京だけだ。

コロナ・オミクロン株がまだ猛威を振るい、まん延防止策が取られている3月初め、(善良な市民?としては、都府県を跨ぐ旅は憚られたので)都内であることいいことに、竹芝桟橋から24時間の航海で小笠原村・父島を訪ねた。医療機関の脆弱な島にコロナウィルスを持ち込まないために、PCR検査を受けたうえで乗船した。
 
  約5000万年前、現在のパプアニューギニア島あたりで、太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込み、高温マントルが上昇して、原初の小笠原群島が形成された。その後、マントルの浅い部分に水が入り、マグネシウムに富むマグマ・無人石(ボニナイト)が生成される。この成分は隕石に含まれるが地球上では小笠原父島付近でしか見つかっていない。この地質的特性も自然遺産登録の契機となった。また、母島に見られる地質はマグマの沈み込みが深くなってできたものであり、わずか50Kmほどしか離れていない父島と組成が異なる。
赤道付近で生まれた小笠原諸島はフィリピン海プレートに乗り、北西に移動し、沖ノ鳥島や南鳥島との分離を経て、現在の位置まで来た。この移動は富士山を作った伊豆・小笠原・マリアナ海嶺の動きであり、現在でも日本に向かって進んでいる。 
小笠原諸島の形成についてはここを参照。
 
小笠原諸島発見の最初の記録は、1543 年、スペイン船によるものであるが、その後1675 年の江戸幕府による調査が日本の領土となる根拠となった。1830年、ハワイにいた欧米人が入植して最初の島民となる。捕鯨船への補給や狩猟を目的としたものであった。その後、幕府が八丈島から入植民を送り込み、日本の領土にしたことで、先住島民も日本に帰化した。欧米系島民と呼ばれる、彼らの子孫は現在、約100名ほどが暮らしている。
小笠原の歴史については以下のURLを参照。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tousho/3/2/3_72/_pdf/-char/ja
 
   シマツレサギ(島連鷺:ラン科)
 (Platanthera boninensis) 固有種・絶滅危惧IB類(EN)
 
   陽の光が差し込む明るい林間に生える。鷺が何羽も連れ立つように舞飛ぶ姿から、この名が付いた。端正な姿だ。
この仲間には昨年紹介したイリオモテトンボソウやシロウマチドリなどxxトンボソウ、xxチドリと名の付くものが多い。いずれも花の形から来ている。
アップ。
あまり鷺のイメージがしない。
鷺草 
   世田谷区の花。
鷺とよく似ている。

 (東平アカガシラバトサンクチュアリー)
 ムニンタツナミソウ (無人立浪草:シソ科)
 (Scutellaria longituba)
 固有種・絶滅危惧IB類(EN)

林内や林縁に生える。木陰のものは背が高い。父島と兄島の固有種。花筒が長いのが特徴。学名のlongitubaは長い花筒。
花の形を打ち寄せる波に見立てたところからこの名が付いた。この仲間は北海道から九州まで分布していて、昨年(2021)夏に紹介した北海道のナミキソウ(波来草)やヒキナミソウ(引波草)など、波に因んだ名が付いている。園芸種も多い。

  (東平アカガシラバトサンクチュアリー)

 シマカコソウ
 (島夏枯草:シソ科)
 (Ajuga boninsimae)  固有種・絶滅危惧IB類(EN)

これもシソ科の花だが、タツナミソウと異なり、春先に咲くキランソウやジュウニヒトエと同じ仲間。小笠原群島でもほとんど見つからない。
この株は世界自然遺産センターの玄関階段の隙間に咲いていた。こぼれた種が偶然(遺産センターだから必然か?)、発芽したもの。
開花期は12-1月で、その後夏にいったん枯れる(だから夏枯れる草)が、初冬に再び芽吹く多年草である。
タチテンノウメ (立ち天の梅:バラ科)
(Osteomeles boninensis) 広域分布種

かつては固有種とされていたが、研究が進んだ結果、小葉の数がやや少ないシラゲテンノウメとともに、中国に分布するテンノウメと同一の種となった。
葉の付き方や枝ぶりはバラ科のサンショウ(山椒)とよく似ている。

背後の浜は、プライベートビーチ感たっぷりの初寝浦海岸。
 
 
 
  ムニンネズミモチ (無人鼠黐:モクセイ科)
(Ligustrum micranthum) 固有種
 
  梅雨の頃、本州関東以西で白い小花をつけるネズミモチの仲間。公園などにも植えられ、決して珍しい花ではないが、1000㎞も海を渡ると希少植物となる。果実がネズミの糞に似ていることから、この名が付いたが、この実を食べた鳥が小笠原群島で糞を落としたことで伝播したのであろう。さて、この実を食べた鳥はどんな鳥だったのだろうか。

 (岩山)
 
 ムニンシャシャンボ (無人小小ん坊:ツツジ科)
(Vaccinium boninense) 
固有種・絶滅危惧II類(VU)

ドウダンツヅジのような釣鐘型の花をつける。ブルーベリーと同じスノキの仲間で実は熟すと甘酸っぱい。
シャシャンボという奇妙な名前はこの木の古語のサシブ(烏草樹)が訛ったものであるという(大辞林)。

                         (旭山)
 
ヤロード (キョウチクトウ科)
(Ochrosia nakaiana) 固有種

白い星型の花をつけるが、写真はまだ蕾。
実は熟すと鮮やかな黄色で、5~6㎝の長楕円形の実が2個向き合い水平に広がる。オガサワラオオコウモリは食べるが、人には有毒。枝や葉を折るとミルクのような樹液がでるが、触るとかぶれる。名前はYellow Wood(イェローウッド)が訛ったもの。
(電信山線歩道)  ←蕾を拡大
父島の南西に無人島・南島がある。
宮崎駿作品「紅の豚」の主人公ポルコロッソの秘密水上基地そっくりの入り江のある所だ。 
↓ (扇池)

             
アオウミガメの産卵地で5-8月頃、この浜で産卵のため上がってくる。また、島の地質はサンゴ礁からなる沈水カルスト地形で、1000-2000年前のカタツムリの半化石(近年の研究で200年前も生きていたことが分かった)が何層にもなって積み重なる。
 アオウミガメの卵の殻  カタツムリの半化石

環境や植生保護のため、11-2月は上陸禁止となっていて、上陸できてもガイド同行でないと入島できない。そんな島へ敢えて上陸したのは・・・この花に会いたかったから。

   (オガニャン・プロジェクトは野生化した猫を捕獲し、飼い主を見つける活動)
      オオハマボッス
(大浜払子:サクラソウ科、海洋性植物)
(Lysimachia mauritiana Lam. var. rubida)  固有種

かつては小笠原群島の至る所で見られた花だが、ノヤギの食害で父島ではほとんど見られなくなった。ノヤギを駆除した南島でやっと回復中である。
「ボッス」とは仏教の法具で、毛を棒の先に束ねたもので、これで煩悩(蚊)を払う。
ハマボッスは東北地方から与那国島までの岩の多い海岸付近で見られる。オオハマボッスはそれより2倍以上丈が高く、葉は細い。 
           

固有種の多くは花の色は白または薄クリーム色で、外来種のハイビスカスやアマリリスなどのトロピカルフラワーに比べると色彩感に欠ける。白い花が多いニュージーランドでは、昆虫が少ないため(約2万種)、花粉送達を虫に頼らなくなり、花は色を付ける努力を放棄したというが、小笠原諸島では昆虫は1300種と更に少ないので、同じようなことが起きたのかもしれない。
もちろん、白以外の花をつけるものもある。主に黄色であるが…。
     シマウツボ (島靭:ハマウツボ科)
(Orobanche boninsimae) 
固有種・絶滅危惧ⅠA類(CR)

今回の花旅の目的の一つ。(ロシアのフェイクニュースと違って)根も葉もある寄生植物。オガサワラビロウやシロテツなど幹性低木林の木本に寄生するというが、この株は前述のヤロードの根に寄生していた。黄金色の鱗片が葉で、その上の筒状が花である。そこからひゅっと出ているのが雌しべ。
この仲間を南アフリカで見た。比較的乾いた砂地で咲いていた。情熱的だが毒毒しい。
(ヒボランチェ・サングリア)
   
  ムニンタイトゴメ (無人大唐米:ベンケイソウ科)
(Sedum japonicum subsp. boninense) 
固有種・絶滅危惧IB類(EN)
 
1㎝ほどの五弁の黄色い花をつけ、葉に大量の水分を含む多肉植物。乾燥の激しい岩の上でも育つ。マンネングサの仲間。
本種の名は、鎌倉時代に中国(唐)から伝わった米(大唐米)に因む。葉がその米に似ているからだという。瘦せた土地でも育ち、収量も多いという。ただし、不味かったようだ。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で食べられている米はこの米かも。

季節的に花期は終わっていたが、1輪だけ私を待っていてくれた。
     (初寝山)

テリハハマボウ(照葉浜朴:アオイ科)
(Hibiscus glaber) 固有種
山の山頂に近い岩場で咲く。照葉の名の通り、葉は厚く、表面はつやつやして滑らか。朝方は黄色いが夕方に赤変してそのまま落ちる。(夕方でも黄色いのはあったが)
海岸近くに同じような花があるが、それはオオハマボウ。葉に毛があり、ざらざらする。 


 朝 → 夕方

←(旭山)

 (電信山線歩道)→
 
   ムニンキケマン (無人黄華鬘:ケシ科)
(Corydalis heterocarpa var. brachystyla) 広域分布種
 
かつては小笠原の固有種であったが、沖縄にもあることが分かり広域種となった。海岸近くの砂地に生える。ノヤギが食べないため、生き延びた。

(南島)
 トキワサルトリイバラ 
 (常葉猿捕茨:サルトリイバラ科)
(Smilax china L. var. yanagitani) 広域分布種

本土のサルトリイバラの蔓には鋭い棘があり、猿がこの棘に絡まって捕まること(猿捕り)から名が付いたが、小笠原には猿はいないので、棘が退化してしまった。秋に実は赤く熟す。伊豆七島にもある。

       (中央山)
 
  ムニンアオガンピ (無人青雁皮:ジンチョウゲ科)
(Wikstroemia pseudoretusa) 固有種・準絶滅危惧(NT)
   
雁皮紙から分かるように樹皮を剝いで、紙を漉くのに使われるが、島に製紙業はない。島の呼び名で「サクラコウゾ」。ミツマタ、コウゾのコウゾであり、紙との関連が知られていたものと思われる。
花はジンチョウゲを小さくした形で黄色く、2~4個を枝の先につける。雌雄異株も固有種ならでは。

  (東平アカガシラバトサンクチュアリー)
 コブガシ (瘤樫:クスノキ科)
(Machilus kobu) 固有種
 

小さな黄緑色の花をつける。この時期はほとんどがまだ蕾なため芳香を感じなかったが、開花すると凄い匂いがするという。さて、どんな匂いであろうか。

    (夜明道路:国立天文台前)


近縁種にテリハコブガシがある。 
 
 

何故花が咲くのか?人間を喜ばせるためではない。受粉を媒介する虫の訪れを促すためだ。被子植物が地上に現れた1億数千万年前からの連綿とした営みである。上手く虫を騙せた花は首尾よく実をつける。そして、今度は子孫の散布のため鳥たちを利用しようとして、おいしい果肉をつけたり、きれいに化粧したりする。その手練手管は見習うべきものがある。
 ←ノヤシ(野椰子:ヤシ科)
 (Clinostigma savoryanum)
  固有種(植栽)

南の島を象徴する植物。ハワイ・ポリネシアから渡ってきたものだろう。

  (清瀬)
オガサワラグミ (小笠原茱萸:グミ科)
(Elaeagnus rotundata) 固有種

実は2cmほど。これは萼筒部が果肉状に肥大した偽果で、子房が大きくなった通常の果実ではない。
食べることはできるが、かなり渋い。鳥には美味しいのかもしれないが…。

 (電信山線歩道)
  タコノキ(蛸の木:タコノキ科)
  (Pandanus boninensis) 固有種

幹の基部から支柱根が何本も出ていて、それが蛸の足のように見えることから名が付いた。果実はパイナップルのような集合果で、食用になる。土産物店に並んでいる瓶詰の硫黄辛子味噌の中にこの実が入っている。
昨年紹介した西表島のアダンの近縁種である。

  (岩山)
  支柱根
 (岩山)



 (初寝山)→
  
  ムニンハナガサノキ
  (無人花笠の木:アカネ科)
 (Morinda umbellata subsp. boninensis)  固有種
ツル性常緑樹。雄性両全性異株でオレンジ色の果実(集合果)をつける。
      シマイスノキ 
   (島柞の木:マンサク科)
   (Distylium lepidotum) 固有種
9月ころ赤い小さい花をつける。蒴果は十字に割れ、種はアカガシラカラスバトの餌になる。「柞」とはナラやクヌギの総称。
オオシラタマカズラ(大白玉葛:アカネ科)
(Psychotria boninensis) 固有種

ツル性低木。匍匐する。沖縄のルリミノキなど、南の島にはアカネ科の植物が多いようだ。

   (巽道路)

その他の固有種(花も実もついていない地味系ですが、ご興味があればどうぞ…画像をクリックすると拡大)
マルハチ
(ヘゴ科)
ムニンイヌグス
(クスノキ科)
ムニンテンツキ
(カヤツリグサ科)
シマザクラ
(アカネ科)
シマモチ
(モチノキ科)
オオバシマムラサキ
(クマツヅラ科)
シマムロ(ヒノキ科)
唯一の針葉樹
 オガサワラモクマオウ
(イラクサ科)
 ヒメフトモモ
(フトモモ科)
 コヤブニッケイ
(クスノキ科)
シマギョクシンカ
(アカネ科)
シロテツ
(ミカン科)
 シマタイミンタチバナ
(ヤブコウジ科)
 ムニンハマウド
(セリ科)
 アコウザンショウ
(ミカン科)
ムニンノボタン
(ノボタン科)

小笠原・父島から最も近い日本本土は和歌山県串本町紀伊大島で935Km離れている。アジア大陸では朝鮮半島の釜山が一番近く1550Kmである。小笠原諸島は数百万年前、海中火山が爆発して海上に姿を現した。当初は溶岩で覆われた不毛の土地で、植物は全くなかったが、長い時間をかけて外界から種が運ばれてきて、発芽し、そしてこの環境に合わせて進化・固有種化を果たした。では、誰が、どこから運んだのか。キーワードは3W1H
Wave(波)-黒潮はフィリピン海から始まり、台湾・沖縄・屋久島を経て四国・本州の東岸を流れ、房総半島から東へ流れる。途中で蛇行や反流を起こし、その支流が小笠原に達する。水に浮くことができる種子がこの流れに乗ってやってくる。オオシラタマカズラなど東南アジアや沖縄に生えている植物に近い種が多いことから、黒潮が最大の運搬者だと見てよいだろう。
Wing(鳥)-絶滅寸前のアホウドリ(現在は聟島で繁殖中)は1ヶ月で1万6000Kmも飛び続けることができる。オオミズナギドリに至っては南極近海からベーリング海まで毎年往復する。これらの海鳥の羽についた種子が海を渡ってくる。(ハワイ・ポリネシアからノヤシが、伊豆七島からはイヌツゲが渡ってきた)
Wind(風)-春先に降る黄砂は、ゴビ砂漠からだと5000Kmも飛んでくる。シダ類の胞子は軽く、貿易風や台風に乗って楽々とこの地に着地する。草木に比べ、シダ類の固有種率が低いことは(自生71種の内12種)胞子が風によって常に供給されていることを示している。
Human(人)-地球上で人類の足跡のないところはもはや無くなった。そしてその靴裏に他の土地の種子がついてくる。さらに悪いことに、自分の利益のために役に立つ植物を大量に持ち込み、それまであった植生を根こそぎにする。戦前、サトウキビ生産のため燃料として持ち込まれたリュウキュウマツやモクマオウは、落葉が殺菌成分を出して在来種の発育を抑制しているし、軍事施設を隠すために植えられたギンネムは葉を繫茂させ、照葉低木樹の成長を阻害している。これらの植物が移入したのはせいぜい100年前で、まだ固有種化は進んでいないが、あと1万年も経てば立派な固有種となるかもしれない。

父島の西方130Kmにある西之島では現在、噴火活動が続いていて、日本の領土は拡大中である。陸地の原初の風景が見られ、学者たちは進化を検証できる場として注目し、観測を続けている。想像したくないが、万が一、プーチンが核ミサイルの発射ボタンを押すと…科学者も想定していない"人類抜きの"新たな進化のページが始まる。

島では様々な動物に出会った。自力で移ってきた在来種や人間が持ち込んだ外来種。後者は生態系の破壊者でもある。小笠原が世界自然遺産に登録される要因のひとつにカタツムリの固有種の多さがあるが、今回は見ることができなかった。
 アカガシラカラスバト(赤頭烏鳩)

小笠原諸島の固有亜種で絶滅危惧ⅠA類。
名前の通り、全体的に黒っぽいが頭は褐色から赤紫色で、首周りが緑色から紫色をしている。
天敵は人間が持ち込んで野生化した猫(ノネコ)だが、近年、捕獲によりノネコが減ったことで、個体数が回復しつつあるという。11月~3月は東平アカガシラバトサンクチュアリー繁殖地近くへの立ち入りは禁止されている。
(捕獲された猫は、本土に運ばれて訓化され、希望する飼い主に引き取られている-オガニャン・プロジェクト)
 ネコ取り罠。沖縄のマングース取り罠と似た形
    ザトウクジラ(座頭鯨) 

父島の周囲にはザトウクジラを始め、クジラ類は700頭ほどいて、ここで子育てをする。ホェールウォッチングも盛んで、ツアー船が出ている。イルカもたくさんいて、一緒に泳げるドルフィンスイムもある。
   
   (フルークアップダイブ)        (潮吹き/ブロー)
水面下には・・・手の届くところに (クリックで拡大) 

ヤマブキベラ 

ロクセンスズメダイ

オビブダイ

ヘラヤガラ

シマスズメダイ

アイゴ
 (シュノーケリング
 して撮りました)
小笠原で一番名が通っている魚が「アカバ」と呼ばれるアカハタ。丸々一匹を唐揚にしたり、煮付けにしたりします。ラーメンの上にもドンと一匹。滞在中何匹も堪能しました。

水産センターでは水槽で飼っていて、生態見学ができます。そして、「歯磨き」も?!
 アカハタ (アカバ)

歯ブラシでアカバのえらを擦ると、気持ちよさそうに腹を見せます。時には口を開けて、口内を磨かせてくれます。歯ブラシを皮膚や口内の寄生虫を取ってくれるホンソメワケベラだと思っているようです。
水産センターでは、その他、アオウミガメやシマアジ、ネムリブカなども見ることができます。構内には小さな水族館まであります(現在は休館中)。時間があれば必見。
(アオウミガメとシマアジ)(ネムリブカ)
外来種 猫以外にも人間が持ち込んだ動物がいます。
ノヤギ 
 (野山羊)
 食肉や乳をとるため持ち込まれた家畜が野生化した。アジア系の山羊ではないので、最初にハワイから入植した欧米系の人が持ち込んだものと思われる。終戦直前、全島民避難により野に放たれた。手当たり次第に何でも食べるが、特に低木照葉樹の葉を好み、壊滅的な被害を与える。
現在は駆除が進み、父島にしか生息していない。普段は断崖近くで集団で暮らしているが、人を恐れず道路わきにも出てくる。観光客が島から出航すると、銃による駆除が行われるが、駆除を知らせる島内放送が流れると姿を消すという噂がある。
グリーンアノール
1960年代に米軍関係者が持ち込んだ。蛇などの天敵がいないため、大繁殖している。ハナバチやカミキリムシなど花粉を媒介する昆虫を捕食するため、ムニンノボタンなど固有種の結実が妨げられている。
グリーンアノールに罪はないが、島の固有種を守るために、駆除活動が行われている。
 そして・・・・・

こいつが最大・最悪の生態系破壊者→
 はい、私(人間)です。
 
最後に…
うれしい出会いがありました。例年なら5~6月に咲き始める小笠原村の花「ヒメツバキ」が、私の来島を歓迎してか、花を開いてくれました。樹は高さ10mを超し、枝先に3、4個の白い花をつけます。大きさはツバキより小さく、茶の花より大きいといったところ。最盛期には島東側の山上ハイウェイ・夜明道路がこの花で白く埋まるという。島では「ロースード」と呼ばれる。先述のヤロードもそうであるように、欧米系の島民が呼んでいたRose Woodから訛ったものだが、この島では民族・出自による差別はなく(それでも終戦前の一括内地避難で、欧米系島民は酷いいじめを受けたと聞く)、島民たちは和気藹藹と暮らしている。島民融和の象徴であり、平和の花だ。隣国のように、ことさら民族の差異をあげつらい、それを口実に侵略や抑圧を行う国に住んでいない幸せを嚙みしめる。
沖縄にも「イジュ」という似た花がある。同種だという説もあり、また、異種(葉の鋸歯の有無や側脈の形が違う)だという説もある。小笠原にはそんなことに拘らない大らかさがある。
 ヒメツバキ (姫椿:ツバキ科)
(Schima wallichii subsp. mertensiana)
固有種

 (実)

    沖縄のイジュ(国頭村)  (三日月山遊歩道)
   
今回訪ねた父島の最高峰・中央山は標高319m。この高さだと海風は通り抜けてしまい、雲が生れず、雲霧林ができない。このため、乾燥した気候となり植生は乾燥低木帯となる。一方、約50km南にある母島には400mを越える山が屏風のように連なっていて、海風は雲霧林を作り、湿潤な気候となる。植生もジャングルのような高木帯となる。わずか50kmしか離れていないのに地質も植生も異なっている。

今回の小笠原・父島での花旅は、地元のミルフィンアイランドガイドの打込(うちこみ)さんに大変お世話になった。1日で固有種42種のほか(シダ類やイネ科など全部を掲載していません)、広域分布種・外来種を含め、合計68種の植物を見ることができたし、そのうえ、本文のチェックもしていただいた。末尾となったが、ここでお礼申し上げたい。
次回は母島も尋ねてみたい。

最後までご覧いただきありがとうございました。

★お礼と報告: カレンダーチャリティへのご協力 ありがとうございました

昨年末、「2022年四季の花々カレンダー」を案内し、東日本大地震震災遺児の奨学金支援としてチャリティへのご協賛を募りましたところ、123名の方から合計451,000円のご寄付をいただき、運営団体の(財団法人「みちのく未来基金」へ送金しました。ご寄付いただいた方々に改めましてお礼申し上げます。
皆さまの温かいご支援のお陰で遺児へ給付される奨学金基金は目標額を達成し、財団では奨学金給付指定の寄付金受付を停止しました(ただし、財団運営費用指定の寄付金は受付を継続)。しかし、私としては今後も花カレンダーを作り、チャリティを続けてゆきたいと考え、ご寄付いただいた方々に今後の寄付先や運営などについてアンケートをお送りし、69名の方からご回答をいただきました。
その結果は以下のURLにありますので、クリックしてご覧ください。
http://www.insite-r.co.jp/charity/questionnair/

そして、
1.今後も「四季の花々カレンダー」販売によるチャリティ活動を継続します。
2.寄付先はこれまで支援してきた「みちのく未来財団」への運営支援を継続するほか、新たに奨学資金を支給している団体を寄付対象に追加します(対象先は今後検討)。また、寄付先を選べるようにします。
3.半数の方が所得税控除を必要とせず、また、受領証明書も利用されていないため、受領証明書発行を希望するかどうか選べるようにします。(発行しないを選んだ場合でも、希望支援先に寄付します)
詳細は2023年カレンダーを案内する11月末~12月初にご案内します。

新書ご紹介: 「世界之嶺-西蔵珠穆朗玛峰生物多様性観測手冊」

青いケシ研究会のメンバーで横断山脈研究会会員の劉渝宏さんがチベットで撮影した青いケシが多数、掲載されています。青いケシ以外でも、プリムラやシャクナゲなど全部で256種の植物や初めて撮影されたキンイロジャッカル(Canis aureus)など貴重な動物や鳥、虫類の写真が600ページの本書に載っています。
(掲載の青いケシ18種)
メコノプシス・シェルフィー(G・シェルフィーが初めて発見したチベット・錯那で 撮影)、M・ガキィディアナ(中国初記載)、M・ピンナティフォリア、M・ホリデュラ、M・エロンガタ(中国初記載)、M・パニクラータ、M・グランディス、M・ポリゴノイデス(中国初記載)、M・シンプリキフォリア、M・シヌアータ(中国初記載)、M・ザンナネンシス、M・ラサエンシス、M・ベラ、M・オウタムナリス(中国初記載)、M・チベチカ、M・ドウォージ(中国初記載)、M・バイレイ、M・プライニアナ

本書は中国での出版で、文は中国語(簡体字)ですが、写真集としてだけでもじゅうぶん満足できる内容です。
 上から時計回りに
  M・シェルフィー、
  M・ガキィディアナ
  M・エロンガタ
 (画像をクリックすると拡大)

← 表紙
背表紙に横断山脈研究会の中村会長、青いケシ研究会の故吉田代表の紹介文があります。簡単な訳を付けます。  
 (中村会長)
 600ページにもわたるこの大書はチベットのヒマラヤ山脈やエベレスト周辺に住むの動植物を紹介していて、その生物多様性の比べようもない豊さを表しています。ページをめくるごとに時間を忘れてしまいます。本書の出版は、チベットヒマラヤ地区に関心を持つ人にとって、この地を更によく知るための良い機会となるとともに、読者に思いがけない喜びを与えてくれます。
(故吉田代表)
 本書にある18種の青いケシは大変素晴らしいものです。本書により、より多くの人が青いケシを好きになるとともに守り育てていくことを願わずにはおられません。
     
ご希望の方は松永(matsunaga*insite-r.co.jp/*を@に変えて)までメールでお知らせください。
価格は4,500円となります。劉さんが5月中旬、中国に行って入手してきますので、それまでにお知らせください。


★旧書ご案内: 「花想 パーキンソン病18年の軌跡」(木佐聡希写真集)

10年前、花を愛した一人のパーキンソン病患者が亡くなりました。不自由な体を押し、震える指を抑えながらシャッターを切り続け、18年間の闘病生活の間に1万枚の花の写真を残されました。その中から選んだ写真をカレンダーにして毎年、知り合いに送られていたものをまとめた写真集です。題材は身の回りにある、普段目にする花ですが、それが木佐さんのファインダーに入ると、みずみずしい姿に変わります。まるで魔法で閉じ込められていた花の妖精が現れたようです。
10年前、縁あってこの本を手にしました。ページを開いた時の驚きを今でも覚えています。花や実が「自らを語って」いたのです。特に印象的だったのは鬼灯(ほおずき)でした。枯れた外皮の鳥かごの中で唄う赤い実。私もこんな写真を撮りたいと願い、手元に置き時々ページを開いています。
この度、ご家族の方からまだ在庫があるので、ご希望の方があればお分けしたいとのご連絡をいただきました。
← 表紙


画像をクリックすると拡大します。
← 背表紙

 1部 1,800円
 (税180円、送料:310円)
 計2,290円のところ
 (送料込み)2,000円で。
 ゆうメールでお送りします。

本体代金は難病患者支援団体に寄付されます。
ご希望の方は佐々木久仁子さままで(メール:sasaki_kuniko@mbg.nifty.com または電話/SMS 080-1441-9073)でご連絡ください。


★予定: 能「山姥」を演じます
昨年9月の予定であった春綱会社中の発表会が延期となりましたが、この5月1日(日)に開催されることになりました。
既にご案内通り、友人たちの追善・慰霊を兼ねて能「山姥」を演じます。私の出演時間は午後5時ころとなります。
連休中ですが、ご興味がありましたらご来場ください。(まだコロナは完全に収束していませんので、ご無理なさらずに)
会場は変更なく、国立能楽堂です。入場料無料です。
期日が近づきましたら、能の解説を含めてご案内を差し上げます。

 
 山姥(やまんば)

 師匠の山井綱雄師
(撮影:辻井清一郎氏)

あなたもできます <ロシア軍ウクライナ侵攻> 抗戦と支援

2月24日演習と称して国境に集結していたロシア軍が同胞民保護の口実でウクライナに侵攻しました。多数の罪もない市民が殺戮されるのを見て、憤り、悲しみ、心を痛めておられると思います。ご高齢の方は、77年前の8月9日、日ソ中立条約を破って満州(中国東北部)になだれ込んできたソ連軍を思い出されたのではないでしょうか。この侵攻でソ連兵が行った無差別攻撃や凌辱などで(シベリア抑留者を含む)軍民の死者数は30万人に上るといいます。ウクライナでも同様のことが起きるのではないかと懸念されます。帝政(ニコライ1世)、共産主義(スターリン)、そして資本主義(プーチン)と政治体制を問わず、この国の権力者は暴力で隣国へ押し入り続けてきました。ソビエトが崩壊した時、まともな民主国家ができるのではと期待したのですが、時計は逆回りし、絶対権力者と独占財閥が国を牛耳る19世紀型帝国主義の国家になってしまいました。
ウクライナ侵攻は対岸の火事ではありません。日本はロシアとほぼ国境を接しています(納沙布岬-歯舞群島・貝殻島間はわずか3.7km。朝鮮半島の非武装中立地帯より距離は短く、大砲の球は楽々と飛び越えて来ます)。ミサイル発射を続ける北朝鮮はこの侵略を支持していて、そして、権威主義の失墜を恐れる中国は支援を隠そうとしない・・・みな隣国です。このままロシアがウクライナを占領してしまえば、その先には台湾や韓国…そして次は日本、かもしれません。
今、この侵攻を阻止し、権威主義者の野望を砕かないと、民主主義と自由の死につながります。そしてその戦いは民主主義・自由主義国のリーダーたちだけの仕事ではありません。私たち市民も参加できる戦いでもあります。ヘミングウェイのように国際義勇軍に参加しなくても、ユニセフや国境なき医師団などの団体へ寄付はできますが、それ以上に効果的な方法があります。市民が「団結を示す」ことです。戦略はこうです。
 
戦争での必勝セオリーに「兵糧攻め」があります。時間はかかりますが、味方の損傷は少なく、敵への打撃は大きく、総崩れが期待できます。ロシアの軍資金の元手は石油やLNGなどの資源輸出です。太平洋戦争で日本が原油禁輸で敗れたのとは逆に、ロシアから資源を買わなければ外貨は稼げず、前線の侵略軍兵士に給与を払うことができなくなります。士気の低い軍隊で「戦艦ポチョムキンの反乱」が起きるかもしれません。
G7の国々もこうした戦略を取ろうとしています。しかし、自国に豊かな資源のあるアメリカを除いて、ロシア資源への依存度の高いEUや日本の足並みは揃っておらず、ロシアに付け入るスキを与えかねません。
日本の資源輸入全量に占めるロシア産は、石油で3.6%、LNGで8.8%、石炭で11%です。大企業がサハリン石油プロジェクトに参加していることやプーチンに尻尾を振った元首相が大派閥の領主ということもあり、現政権は原油やLNG禁輸について明確な態度を表明していません。ならば、私たち市民一人一人が「ロシア産の原油・LNGは要らない、買わない」と表明し、実際に消費を減らすことで、政府や資源輸入業者に禁輸への圧力(後押し)をかけることができます。
具体的には電力使用を7%、ガスを9%、ガソリンを4%減らすことができれば、ロシア産資源を使わなくても済みます(発電はLNG37%、石炭32%、石油7%の割合で使用しています)。
下表は昨年1年間の私のオフィスの電力・ガス使用量です(車がないのでガソリンはなし)。これからロシア軍が撤退するまでロシア産エネルギーに相当する分の節減に努めます。

(太枠内の赤字は削減後の目標値)

この戦略にご賛同いただけるようでしたら、皆さまも是非参戦してください。また、お知り合いにも呼び掛けてください(このページを転送していただいて結構です)。世界中で侵攻に反対する人々が自国で輸入するロシア産の原油・ガスの使用をやめることができれば、ロシア軍を撤退に追い込むことができるでしょう。そして、節減により浮いた光熱費は是非ウクライナへの人道支援寄付にお使いください。また、この活動によるCO2削減で、地球温暖化防止につながりますし、そのことで貴重な固有種を守ることもできます。
東日本大震災のあと、日本は8年間でエネルギー消費量を10%減らすことができました。この目標は達成可能な数字ですが、既にエコを実践している方や消費量の少ない方にはきつい目標となるかもしれません。また、今年も酷暑が予想されますので、適度に冷房などを使い、無理のない範囲でご協力ください。
  



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2022.3.24 upload
2022.3.27 revised


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