実る秋

四季を色に例えるならば、春は青、夏は朱、秋は白、そして冬は黒です。
これらは中国古代の方位を表す「青龍」「朱雀」「白虎」「玄武」(玄は黒、武は神格化された亀)から来ており、それぞれ「東」「南」「西」「北」を表しています。(麻雀の順序と同じですね)
また、人生もこの順序で例えられ、平均寿命80歳の現代では、20歳以下の若者は「青年」で、30〜40歳代の働き盛りは「朱年」でしょうか。そうすると50〜60歳は「白年」となり、人生の実りを刈り取る年代となりますね。
詩人北原白秋もこの実りにあやかって、このような雅号を付けたのでしょうか。(ちなみに、私の家の近くに、白秋が一時住んでいた寓居跡があります)

(世田谷区赤堤) (イネ)

米は稲を脱穀して精米(胚芽を除去)したもの。日本人にとっては、単なる食料ではなく宗教的な価値を持つものです。米の持つ「力」については、古来より多くの伝承・伝説があります。また、天皇行事のほとんどは稲作の農業儀礼に関するものです。
「つきあい残業」や「飲みニケーション」など、「一緒にする」日本人の労働スタイルは農作業から来ていますが、3000年以上の歴史の上に立っているので、そう簡単には変われませんね、残念ながら。
米政府の米輸入関税撤廃要求も、こうした日本的事情を余り理解していないようです。1極主義で図に乗っている米国アメリカに送る一句。

実るほど 頭を垂れる 稲穂かな

世田谷には陸稲の田が残っています。
 
穀類ばかりでなく木の実や果物も秋の実りを演出します。
栗 (クリ)

稲作の開始をもって弥生時代が始まりますが、その以前の縄文時代は採取生活でした。その縄文人を支えた主食が栗。青森県の三内丸山遺跡から、彼らが栗を栽培していた痕跡が出たそうです。
栗はクヌギ科の広葉樹。秋田県の白神山地のように、縄文の森は多くの動植物を養うことができた豊かな森だったことでしょう。

                (世田谷区千歳台)
(カキ)

桃栗三年、柿八年
辛抱の譬えですが、その分成果も大きい、ということでしょうか。
しかし市場の評価は年数に関係なく、不断の品種改良努力を行なってきた桃が一番高いようです。
ビジネスも同じで、伝統の上にあぐらをかいて、
革新的な商品・サービス開発をしない企業は
どんどん評価が下がります。

(世田谷区祖師谷)
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柘榴(ザクロ)

中国原産。本来は薬草として、鎌倉時代、茶などと一緒に仏教の高僧が持ち込んだもの。薬になるのは小さくてとても酸っぱいです。
中国西安近辺の柘榴が有名で、大きくて甘く、
中国の方に送っても喜ばれます。

(世田谷区松原)
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郁子(ムベ)

その昔、近江に都があった頃、天智天皇が近江八幡付近を行幸中、この実を献上され、余りのうまさに「むべなるかな」(もっともだ)と賞賛したことから、この名が付きました。
一時途絶えていましたが、皇室への献上も再会され、この町では郁子を町おこしの材料としています。
(11月?日の日経朝刊に掲載されました)

(世田谷区豪徳寺)
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葡萄(ブドウ)は糖度が高く、自然発酵でアルコールに変わる唯一の果物です。(梅酒などはリカーを加えて作ります) ギリシャの酒の神バッカスが頭に巻いているのも葡萄の蔓。
古来よりこの酒のためにどれだけ多くの幸福と不幸が生まれたことか・・・・
 
葡萄(ブドウ)キャンベル種
(世田谷区羽根木)
洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ) 
(世田谷区松原)
葡萄は蔓性の木ですが、山牛蒡は草です。実は食べられませんが根は薬草です。(山葡萄は別の種類)
 
もちろん食べられない実も立派に色づきます--「食い気」ばかりじゃないんですよ。色気もたっぷりと。
 
花水木(ハナミズキ)(ドッグウッド)
春は花で、秋は実の色で楽しめます。
(世田谷区桜上水)
紫式部(ムラサキシキブ)
実の色が紫から付いた名前。
(世田谷区豪徳寺)
白式部(シロシキブ)

白い実のもあります。
(世田谷区八幡山)
 
南天(ナンテン)
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(世田谷区赤堤)
ピラカンサス
もう、緋毛氈のよう
(世田谷区豪徳寺)
ピラカンサスの花
可憐な白い花です。
(世田谷区砧)
 
「実」ばかりでなく、「花」もあるのが本当の「白年」(世間では「中年」ともいいますが・・・・)
匂うばかりの「おじさん」「おばさん」の実力もお見せしましょう。
  金木犀(キンモクセイ)

今や花も季節を問わず楽しめるようになりましたが、この花の匂いを嗅ぐとしみじみ「秋になったんだ」と感じます。
現代人の嗅覚は衰えたようにも見えますが、季節感だけはしっかり確保しているようです。

春の「沈丁花」や初夏の「梔子」の匂いはしっとりとした色っぽさがありますが、金木犀は「健康なお嬢さん」といった爽やかさがあります。
金木犀の仲間に「銀木犀」があり、匂いは同じです。

(世田谷区羽根木)
 
 (世田谷区千歳台) 
クロッカス

「パエリア」(お米を使ったスペイン料理)にはサフランは欠かせませんが、そのサフランはクロッカスの雌蕊を乾燥させたもの。かつては「サフラン1g、金1g」と言われるくらい貴重でした。
春と秋に咲きます。


(世田谷区桜上水)
 
クロッカスのように姿や色は違っても同じ種類、という花もあれば、姿形は似ているが別の種類という花も多くあります。
何かと「似ている」花々をご紹介しましょう。

まず花同士では、ルコウソウとカーディナル・クライマーはどちらも蔓性で、フェンスによじ登ります。咲いていたところも、いずれも保育園の庭先でした。
屡香草(ルコウソウ)

(世田谷区船橋 船橋西保育園)
似たもの同士ですが、花弁や葉の形が少し違います。ルコウソウはスター(星)型、カーディナル・クライマーはペンタ(五角)形です。 カーディナル・クライマー

(世田谷区松原 羽根木保育園)
 
紅花大文字草(ベニバナダイモンジソウ)

「名は体を表す」のは花の世界も同じ。
この花弁の形を見れば、説明は不要でしょう。
京の「大文字」の送り火の形にも似ています。
「雪の下(ユキノシタ)」の仲間です。

(世田谷区経堂)
時鳥(ホトトギス)

鳥の時鳥は「郭公(カッコウ)」のことで、春に渡来し、鶯などに抱卵させますが、花のホトトギスは秋咲。季節が違うため、出会うことはありませんが、鳥の羽模様からこの名が付きました。

(渋谷区千駄ヶ谷)
 
多くの花が春と秋の2度咲きます。(「人生2度結婚がベスト」言う説もありました)
気温や日照時間が似ているためでしょうが、これから冬を迎える秋の花にはどこか切迫感があります。
何も「30歳過ぎの独身者」のことを言っているわけじゃないんですよ。誤解しないで下さいね。
 
フクシア
春の花は可憐ですが、秋咲きにはどこか
年増の魅力が・・・。春咲はこちらをクリック

(世田谷区成城)
ダツラ
初夏に咲くダツラは朝鮮朝顔という、優雅な名前が付けられていますが、秋咲には威圧感があり、原産地インドを想像させます。

(世田谷区豪徳寺)
 
   
  
     曼珠沙華(マンジュシャゲ)
            (世田谷区祖師谷)

「原節子」と並んで銀幕(テレビ)に映らない大女優・歌手といえば山口百恵さん。
この人の唱った歌詞を口ずさんでいる方は、立派な「おじさん」「おばさん」。
JRデスカバージャパンのテーマ曲となった
「いい日、旅立ち」や「秋桜(コスモス)」など秋をテーマにした歌がヒットしたようです。
その一つが「マンジュシャゲ」(阿木曜子作詞、宇崎竜童作曲だったかと思いますが)

「狐のカミソリ」とも呼ばれ、また、根には毒があるといわれ、人気のある花ではありませんが、毎年9月の彼岸の頃にきちんと咲いてくれます。(このため「彼岸花」とも呼ばれます)
女の情念の怖さを思い知らされるような花です。

    
            

  
お礼とお願い
前回、前々回、名前が分からない花の写真を掲載しましたが、多くの方から情報をいただき、いくつか判明しました。ありがとうございました。
名前の分かった花を別ページに集めました。ココをクリック

しかし、またまた名前が分からない花がたくさん出てきました。たとえばこのランタンのような花。
                        
「何かな、なに花な?・・・」のページに写真を載せましたので、もし、ご存じならば教えてください。
ココをクリック、または http://www.insite-r.co.jp/Flower/unkown/

今回も綺麗な花を贈ってもらいましたのでご紹介します。
秋桜(コスモス)

見事なコスモスの絨毯です。国立昭和公園(立川市)で。
(小林様から頂きました)


お気に入りの写真がありましたらオリジナル(300〜400KB程度)をお送りします。
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