「幸せの国」ブータンの
メリーポピーたち

『秘境ブータン』(中尾佐助)といわれてからはや60年。仏教と国民総幸福(GNH)を国是として、近代化・民主化を推し進めつつ、環境や伝統の保全を図ってきたブータン王国。不便を承知で手つかずのまま残してきた自然。地球最後の楽園かもしれません。
国全体がモンスーンの厚い雲で覆われる6月中旬から1か月間、全ての青いケシ(ケシ科メコノプシス属)を見ようと、ブータンの中西部をトレッキングしました。

 メコノプシス・シンプリキフォリア
(subsp. グランドフローラ)

そのすっきりした立ち姿からシンプルと名付けられた花。その亜種のグランドフローラは花びらも多く、大変ゴージャスです。M.シンプリキフォリアの生育域はチベット~ブータン~ネパールと広いのですが、個々の花はあまり群落を形成せず、こんなところにと驚くほどポツン、ポツンと離れて咲いています。

背後の峠はチョモラリベースキャンプからリンシに抜けるニュリ・ラ(峠)、標高4870m。プナカを流れるモ・チュー(川)が峠の直下から流れ出している。
日用品や食料を背に付けた荷駄の隊商が下の峠道を通ってゆきます。

(チョモラリトレック、ニュリ・ラの東 標高4760m)

(注)
ブータン語でラは峠、チューは川を言います。また、ツォーは湖、ゾンは城、ゴンパは寺院です。
 
トレッキングコース (青い線が徒歩、赤い線は自動車で移動 合計歩行距離は500Km近くになりました。)
(1) ブムタン=デュール温泉=メンチュガン往復(6月17日~27日)
(2) ハ-リゴナ湖-ハ周回(6月30日~7月5日)
(3) チェレ・ラ(7月6日)
(4) グニツァワ-チョモラリBC(ジャンゴタン)=ツォー・プー-リンシ-ヤレ・ラ-ティンプー (7月7日~17日)
(5) ハ(シャナ)=テゴ・ラ=セレ・ラ=ハ往復(7月18日~19日) 

(ブータン中西部 詳細図)

(Google map)

(1)ブムタン=デュール温泉=メンチュガン
ブムタン県の県庁所在地ジャカールの北、(デュールからトレッキングが始まります。はじめは樹林帯を行きますが、標高は3000m以上あるため、ヒルはいません(虎や熊はいますが…)。低緯度(北緯28度)のため日本の亜高山帯で咲くような花々が見られます。

   オオバタケシマラン(大葉竹縞蘭)の仲間
ストレプト・パラシンプレックス(Streptopus paraimplex)

小さな白い風鈴がぶら下がっているようです。
ラン(蘭)と名が付いていますが、ユリ科の花。
秋になると赤い実をつけます。


(チョクチョマキャンプ地 標高3200m)
 カトカルティア・ビローサ

このトレッキングで最初に出会ったケシ科の花。
以前の分類では青いケシの仲間(メコノプシス属)でしたが、現在はケシ科カトカルティア属に分類されています。


(チョクチョマキャンプ地の北 標高3540m)
トレッキング2日目から青いケシが現れます。          

 メコノプシス・シヌアータ  
   
チベット南部(ヤルンツアンポー)からブータン、ネパールにかけて分布。沢べりや林床など水分の多いところによく見られます。  
 
 
 
 
(チョクチョマとツォチェンチェンの中間 標高3700m)
 メコノプシス・ベラ 
(Subsp サブインテグリフォリア.)

ブータン中部からインド東部(アルナチャール・プラディッシュ州西部)にかけて分布します。水の滴る岩の上によく見られます。茎や葉にはとげはありません。
花の色や葉の形に多くの変異がみられます。この場所でもワインカラーや白色の花をつけたものや葉の形が杓子状やセリ葉のものがありました。

(いずれもチョクチョマとツォチェンチェンの中間
 標高3700m)
 ワインカラーのM・ベラ     
    白いM・ベラ (たぶんアルビノ種)
 

ここから2日目のジュレ・ラを越えたところで、岩の上にM・ベラが咲いていました。葉も杓子型で基準種に近い姿です。
 
(ジュレ・ラ 標高4300m)

この崩壊地はまるで希少種のホットスポット。
キプリペディウム(アツモリソウ)2種類が見られます。
キプリペディウム・ヒマライクム   キプリペディウム・チベティクム 


ツォチェンチェンの谷はシャクナゲが満開です。石楠花谷と名付けたいくらい。往路は霧の中でしたが、復路では数少ない晴天に恵まれました。
正面の雪の残る岩峰は標高5300m、その向こうにブータン最高峰で世界最高未踏峰のガンカル・プンスム(標高7570m)があります。
シャクナゲの向こうの林の中にヤク小屋があり、朝餉の煙が立ち上っています。トレッキングコースはこの谷の奥から左に登ります。

  
   ロードデンドロン・カンパニュラタム
 
(subsp.アエルギノスム)
 
         
  4月末から7月にかけてブータンはシャクナゲで覆われます。有名なところではティンプーの東のドチェ・ラがあります。
6月末のこの時期は高地でしか残っていません。
 
 
(ツォチェンチェンキャンプ地  標高4000m)
  
  
                メコノプシス・シンプリキフォリア
(subsp. シンプリキフォリア)

こちらが本来のシンプリキフォリア。
花丈は60~70㎝。
ヒノキやヘビノボラスのブッシュの中で、
ヒューっと首を伸ばして、一株だけ
ポツンと咲きます。ときどき、
茎の途中からかじられています。

(ツォチェンチェンの北 標高4100m)
 
最初の難関ジュレ・ラ(標高4550m)越えでは軽い高山病にかかり、足がなかなか前に進みません。
この峠の前後やジュレ・ツォー(湖)の左岸の斜面には黄色いメコノプシスがびっしりと咲いています。
 メコノプシス・パニクラータ

青いケシ属では比較的大型で、2m近く
まで伸びますが、この場所の
パニクラータは小型で、花丈は大きい
もので1mほどです。
湖の左岸にはたくさん生えていますが、
右岸にはまったくありません。
青いケシは泳げないのですね。

パニクラータの生育域は、大ヒマラヤの
南縁、ネパールからブータン、中国・
インド国境までと広範囲です。

(ジュレ・ツォー左岸 標高4100m) 

 

ジュレ・ツォーからクト・ラ(標高4500m)へ登り返すとM・パニクラータは姿を消し、代わりに青いケシの代表ともいえるメコノプシス・ホリデュラが登山道の両側に現れます。往路は時期が早かったのと高山病で気が付きませんでしたが、復路では咲き始めの花を見ることができました。8月になるとこのあたりはホリデュラ街道となることでしょう。

     メコノプシス・ホリデュラ
(Subsp.
デュクユレンシス)

M・ホリデュラは中国青海省からチベット、ネパール、ブータンにかけて広く分布します。花の色も青ばかりでなく、ピンクや白色もあり、亜種も多くあります。

(クト・ラの西 標高4200m)


クト・ラから泥道を一挙に1200m下ると、ガンカル・プンスムの氷河湖から流れ出るマンデ・チューのほとりにデュール温泉があります。
日本の昔の湯治場と同じで、現地の人々が食料持参で1週間ほど湯治に来ます。わたしも、高山病を癒すために一日滞在しました。

   温泉小屋  100%源泉掛け流し (飲泉もできます)  
       

高山病は治ったのですが、その晩食べた生サラダで食中毒を起こし、何も口にできないまま、雨の中フラフラの状態で1200mを登り返し、ワルタン放牧地へ。手前の4500mのネプ・ラを越えるときは「何でこんな苦しい思いをしなければ…」とわが身の煩悩を悔やんだものでした。そして、翌日このトレックでの最高地点サガ・ラ(標高4820m)を超え、ピンクポピー、メコノプシス・シェルフィーの咲く目的地のメンチュガンへ。このトレックのハイライトです。

     メコノプシス・シェルフィー

イギリスのプラントハンターのジョージ・シェルフィーが南チベットのツォナで1933年に発見した青いケシ属。そのほかの生育地はブータンの山岳地帯3か所のみ。その中でもこのメンチュガンはもっとも個体数が多い。
M・シェルフィーは岩が露出した崩落地や矮小化したヒノキのブッシュの中に咲きます。

(サガ・ラの北 標高4400m) 

 
   新しい発見がありました。
M・シェルフィーの生育地の中に、あのロンリーメコノプシス、シンプリキフォリアが一むら咲いているところがあり、しかも交雑種が咲いているではないですか。この花の種が、同じ花をつけるなら、新種の誕生となります。
どなたかこの場所を訪ねて、種を採取してくれませんか?
   
 
メンチュガンのヤク放牧地では何百本ものM・シェルフィーが乱れ咲いていましたが、少し時期が遅かったようで、惜しいことにほとんどの花は盛りを過ぎていました。
       (メンチュガン 標高4200m)
 

同じ道をブムタンまで戻りましたが、往路で出会えなかった花に合えたり、天気に恵まれて素晴らしい光景も目の当たりにでき、実り多いトレックとなりました。一日早く戻ることができたため、ティンプーで生物多様性研究所を訪ね、青いケシの標本を見学することができました。

(2) ハ-リゴナ湖-ハ周回

最近(2010年)外国人にも解放されたハ県。中国国境も近いだけに、軍隊(インド軍)も駐留しており、のんびりとした中にもどこか物々しさも感じられる地域です。県庁所在地ハの郊外からトレッキング開始。1日半で尾根へ出ると、そこはもう岩稜とヤクが草を食む草原地帯です。

   ハー谷遠望

魚影の濃いハ・チューが谷を流れる(ブータン人は「空飛ぶ鳥と水に住む魚は尊いもの」とあがめて食べない)。
中央の小高い丘に僧院があり、その下からトレッキングが始まる。
画面左下の青い屋根はインド軍の駐屯地。

(チュレイ・ラへの自動車道から)

   
   (チショルンパ 標高4200m)
 メコノプシス・スペルバ

M・パニクラータと並ぶ大型のメコノプシス。丈は2mをゆうに超えます。岩壁や
沢の落ち口など流れのある所で生えます。ハ地方の固有種です。また、白い
花をつけるメコノプシスはアルビノ(白化現象)以外ではこの種のみです。
 
   (ツォンサカ 標高4100m)
   
 メコノプシス・エロンガタ
 
M・スペルバが咲いている場所の近くにはこのM・エロンガタも咲いています。やはり流れのあるところです。
この花は、従来、M・ホリデュラの一種として分類されていましたが、今年の秋、新種として発表される予定です。エロンガタは「長い」という意味。
特徴は雄蕊(おしべ)の 葯の下に白い筋があること(M・ホリデュラにはありません)。このページで掲載しているM・ホリデュラと見比べてください。

(ウォンジの北 標高4300m)
 
 
     
 
   ビストルタ・マクロフィラ
   
峠に上がるとピンクのカーペットが一面に敷き詰められている。放牧されたヤクは主にイネ科の草を根元まで食べるため、芝生になり、そこにヤクが食べないタデ科のビストルタが繁茂する。花の褥(しとね)である。

峠にはケルンが建ち、通過する人は石(または花の枝)を一個積んでゆく。

(ゴンチェ・ラ 標高4100m)
 
  新種の可能性のあるメコノプシス

同行した馬方が、中国国境付近でスマホで撮影したもの(スマホ画面を撮影した画像)です。
この地域は、軍事上外国人の立ち入りが制限されています。

このほかにも、亜種らしい花がありました。
 


(3) チェレ・ラ
チェレ・ラはハとパロとの間にある峠で、最高地点の標高3988m(ブータンの標高は地図によって異なります。私のGPSやGoogle mapでは3800mでした)まで車で上がることができます。峠には、祈りの旗、ダルシンが林立し、ルンタが風に舞っています。晴れた日にはチョモラリが見えるとのことですが、この日は雲に隠れていました。メコノプシスは峠からさらに南に登ったところに咲いていました。パロ空港からなら約2時間半。最も手っ取り早く青いケシを見ることができるスポットです。

   ←左
 メコノプシス・エロンガタ
 右→
メコノプシス・ホリデュラ
(Subsp. ホリデュラ)

チェレ・ラのこの2種類の花は、長らく同一種と混同されてきましたが、両方を見比べると
 花の付き方
 葉の形
 棘の付き方
が違っています。
また、写真ではわかりにくいですが、雄蕊(おしべ)の 葯の下に白い筋があるかないかも違いです。(M・ホリデュラにはありません)

(チェレ・ラの南 標高3960m)
 
     
  メコノプシス・パニクラータ

M・パニキクラータはブータン中の高山ならどこでも見られますが、白い花(アルビノ)はここだけでした。
(ジュレ・ツォー左岸では赤い花も報告されています)。

(チェレ・ラの東 標高3800m) 
 

 チェレ・ラから下り、パロに入る手前に国立種子研究所(農業機械化センター)があります。その横に寺院があり、大きなチョルテン(仏塔)が立っています。ブータン人ならだれでも知っている日本人、西岡京治氏の記念塔(兼陵墓)です。西岡氏はブータンの農業発展に尽くした功績で国王からダショー(爵位)と剣を賜った唯一の外国人です。訪ねると、寺院から僧侶の読経の声が途絶えることなく流れていました。


(4) グニツァワ-チョモラリBC(ジャンゴタン)=ツォー・プー-リンシ-ヤレ・ラ-ティンプー
ブータンで最も人気のあるトレッキングコースです。乾季(秋から春)には多くのトレッカーで込み合うこのコースも、モンスーンの時期は閑散としています。この時期は、荷駄を運ぶ地元民や電力開発資材を運ぶインド人労働者が往還の主役です。チョモラリベースキャンプ(BC)から先は、トレッカーもあまり通らないコースをたどってティンプーまで歩きました。4500m以上の峠を5つ越えるきついコースですが、うれしい発見もありました。

     カラマツソウ(唐松草)の仲間
  タリクトルム・ケルドニー


以前のチョモラリトレックは、火災で廃墟となったドゥック・ゾンからのスタートでしたが、今ではシャナの少し奥のグニツァワまで車が入るようになり、一日短縮できるようなりました。
道は整備されているものの人や馬の通行量が多いため、ぬかるんでいます。1日目のキャンプ地タンタンカまでは、このカラマツソウ以外に見るべき花はなく、ひたすら歩きます。

(グニツァワとタンタンカの中間 標高3400m) 

 チョモラリBCに近づくと樹林帯から草原に代わり、サクラソウ(P.シッキメンシス)やオノスマ(瑠璃草)などが現れ始めます。
 
   メコノプシス・プリムリナ
   
丈が20~30㎝の小型のメコノプシスです。ブッシュの下や湿ったがけ地に咲きます。チョモラリBCの手前から現れ始め、ツォー・プー湖、リンシ谷ではかなりの密度で咲いていました。でも、一つ隔てた隣の谷では全く見られないということもあります。
「プリムリナ」はサクラソウ(プリムラ)からきています。サクラソウのような葉を持つということでしょうか。それともサクラソウが咲くような少し湿った場所に生育するということでしょうか。
   
   (ジャンゴタンの南 標高 3800m)
 

チョモラリBCが最も混むのは山頂がくっきりと見える乾季の9月~4月。キャンプ場には400張のテントが出現するといいます。このときはヨーロッパ人のカップルと私の2組で広いキャンプ場を独り占め。わずか30分ほどでしたが、背丈が7314mもあるこの女神は微笑んでくれました。

   チョモラリ 
 東面

チョモラリBCでの目的地はチョモラリとは反対側のツォー・プー湖です。400mのエンドモレーン(氷河末端の堆石跡)を登りきると、ツインレイクと呼ばれる2つの湖があります。その周囲にブータン固有のメコノプシスのほか、M・プリムナリ、M・ホリデュラ、M・シンプリキフォリアが咲き乱れています。

     メコノプシス・ブータニカ

以前は黄色い花をつけるM・ディスキゲラの亜種と考えられていましたが、2012年新種として分類されました。
ブータンの固有種であることからブータニカの名前が付きました。
丈は1mほどあり、花も15㎝ほどと大型です。なによりも特徴的なのは花弁の色が咲き始めの紫から時間とともに徐々に青へと変わってゆくことです。

(ツォー・プーの西 標高4380m)
   
   
メコノプシス・ホリデュラ
(Subsp. ホリデュラ)

通常、M・ホリデュラは一つの茎に一つの花をつけます。しかし、このホリデュラは一つの茎にいくつか花をつけているように見えますが、実は茎がくっついて一本に見えるだけなのです。

背景の湖はツォー・プー湖の下の湖。晴れていれば湖の向こう側にジチュ・ドラケの鋭い峰が見えます。
この湖にマスのような魚がいるので釣ってみたのですが、成果はありませんでした。

(ツォー・プー湖の東 標高4450m)
 


チョモラリBCから標高4764mのニュリ・ラを越えて、リンシに向かいます。途中はヤクの夏の放牧地があり、のんびりと草を食んでいます。峠を越えたガレ場にはセーターを着たようなキク科の花やガレ場と同化したような花もありました。

 
 ワタゲトウヒレン(綿毛唐飛廉)
サウスレア・ゴシピフローラ


寒さから花を守るために綿毛を着ているため、セーター植物ともいわれます。漢方薬になるため、盗掘されチベット経由で密輸されているようです。アーミーチェックポイントはこうした密輸品の取り締まりも行っています。
 
 
差し渡し27㎝、花の直径は7cmほどです。
キク科のサウスレアの仲間だと思います。
 

この時期のリンシ谷はヒミツの花園。ビストルタ、プリムラ(シッキメンシス)、ペディクラリス(塩釜菊)、キンポウゲが咲き乱れます。
M・プリムリナも密度濃く、ここでは1mごとに咲いていて、もはや珍しい花ではありません。

   
 花の谷 リンシ・ゾンへの分岐付近 標高4370m  メコノプシス・シンプリキフォリア

リンシのキャンプ地からも雄大な峰々と氷河が望めました。乾季の観望トレッキングでも、山々がこれだけすっきりと見られないとのことです。左からチョモラリ(左の小さい白いコブ)、ジチュ・ドラケ(標高6989m)、そしてテリンガン(標高6789m)。草原の小屋はアミーチェックポイント。


ここから進路を南に転じ、ヤレ・ラ(標高4930m)、レディ・ラ(標高4750m)、ヤス・ラ(標高4400m)を経て、ティンプーに戻ります。レディ・ラからのコースは地元のヤク放牧者しか通らない道ですが、スイスかと見まがうような風景、そしてめったに見ることができな青いケシに合うことができました。

   メコノプシス・ホリデュラ
 (アルビノ)
(Subsp. ホリデュラ)

   通常の青いM・ホリデュラに混じって、
白い花をつけたホリデュラが一株だけ
ありました。花弁だけでなく、雄蕊の糸
まで白化していました。

ヤレ・ラは左上の頂の左側の鞍部を
超えてゆきます。


 (リンシの南 標高4200m)
 
 メコノプシス・ブータニカ

 
  これまでM・ブータニカはチョモラリBCに近い、ツォー・プー湖の周囲でしか確認されていませんでしたが、今回、ショードーからレディ・ラに向かったことで、新たな生息地を見つけることができました。

ツォー・プー湖のブータニカに比べて、やや小型(丈は50㎝程度)で、花数も少ないようです。

(レディ・ラの北 標高4550m)
 
 
 レディ・ラから南の谷(ショムタン谷)を眺める。 ヤクがのんびりと草を食んでいる。これが乳牛だとまるでスイス。
   
     
   
メコノプシス・ポリゴノイデス 
 
M・ホリデュラやM・シンプリキフォリアのような華やかさはありませんが、青いケシの仲間とは思えないくらい清楚な花です。
藪や低木のなかでひっそりと咲きます。
ショムタンのゴルジュを越えて、タケタン谷に入ると群落が現れます。


(タケタン谷 標高4050m)
 
右→
(リンシ・ゾンの下 標高4070m)
 
     
 
   メコノプシス・ホリデュラ
   
  果実の先まで1mもある背高ホリデュラ。 多様な形があります。
  (ナブ・ツォーの北 標高4000m) 
   

 
(ちょっと中を拝見)
温室植物は葉を丸めて、若芽や花を寒さから守ります。また、虫たちに避寒所や避難所を提供し、花粉を運ばせます。

←サウスレア・オブバラータ
(ボンボリトウヒレン・
雪洞唐飛簾 
苞の形から灯を入れるボンボリの日本名がつきました。インドのシーク教徒はこの花を集め、神に捧げます。

(タケタン谷 標高4350m)

 
 レウム・ノビレ (背高大黄)→

 タデ科の植物ですが、花芽の食感はカリフラワー。食べられます。漢方では便秘薬になるので、食後は要注意。青いケシには関心を示さないブータン人もレウム・ノビレがあると写真を撮っています。
背景の尖った山は2日前にキャンプを張ったショムタン谷の岩峰。

    (ナブ・ツォーの南 標高4400m) 
 
   キク科(左)とタデ科(右)の違いが良く分かります。  

この後、パジョディン寺院で1泊して、ティンプーに戻りましたが、ティンプーの登山口からパジョディン寺院までロープウェイを通す計画があります。これが完成すると、1日、2日で青いケシをはじめこうした珍しい高山植物を見ることができるようになります。しかし、そうなると登山道は荒れ、ゴミだらけになりかねません(パジョディン寺院から聖なる湖ドゥン・ツォーへの道には、既に多くのごみが落ちていました)。開発より自然保護を優先する国ですので、そうならないことを願っています。

(5) ハ(シャナ)=テゴ・ラ=セレ・ラ=ハ往復
最後のトレックは車で峠の下まで行き、1泊2日のピクニックです。旅行会社の社長夫妻も加わり、宴会コース。まるで社内旅行に参加したようです。ここで見られるメコノプシスの開花時期が7月中~下旬と遅いために、2度に分けてハを訪れることになりました。

   
メコノプシ・ワリッキー (Sbusp. フスコプルプレア) 
  前々日、ブータン西部は大雨で川が増水し、橋が流されて上を通っていたトラックが川に落ち多数の死者が出ました。セレ・ラへ上る道でも橋が流されたり、流木がダムのように積み重なって、馬が通れなくなったため、予定を変更し(前日に来た日本の団体は途中から引き返したとのこと)、流された橋の近くでキャンプを張り、翌日、流れが収まった川を遡り、セレ・ラに到着しました。幸い、咲き始めの花に合うことができました。

(セレ・ラの東 標高3700m)

昨年(2015年)ブータン東部と国境を接しているインド・アルナーチャルプラディッシュで青いケシを見たので、今回は東部へは行きませんでした。ブータンの国花、メコノプシス・グランディス(Subsp. オリエンタリス)はここで生えています。この花は、ピンクポピーの発見者、ジョージ・シェルフィーが1933年に見つけたものですが、ブータンの人たちはM・ホリデュラであれ、M・シンプリキフォリアであれ、青いケシならどれも、ブータンの国花といいます。とてもおおらかです。

 メコノプシス・グランディス
(Subsp. オリエンタリス)


 ブータン東部タシガン県のメラ・サクテンからインドアルナーチャルプラディッシュ州にかけて分布する比較的大型の青いケシ。
基準種のメコノプシス・グランディス(Subsp. グランディス)とは生育地も異なり(ネパールからブータン西部)、また葉の付き方も異なるので、違う種に分類すべきとの説もあります。

(インド アルナーチャルプラディッシュ州 バンガジャン
 標高4200m)
 

昨年、インド(アルナチャール・プラディッシュ)や中国で見た花々はこちらにあります。(→下線部をクリックして下さい)
または、下記のURLをコピー&ペーストしてご覧ください)
http://www.insite-r.co.jp/Flower/2015/aug/karatenjiku.html

1か月間のトレッキング中、ブータン人のガイドやスタッフと寝食を共にし、ブータンやブータン人についていろいろのことを学びました。
九州より一回り小さい国土で、人口70万人強(島根県とほぼ同じ)、超過疎の国です。それでも、国連に大使を送り、軍隊を持ち、航空会社も2社、携帯電話会社も2社持つ国。国王が絶大な人気を持ち、母系制が色濃く残り、女性が生き生きと暮らし、そして夜這いの習慣も残っているという不思議な国です。それが今、急速な都市化と情報化を進め、社会制度も一夫一婦制へ舵を切りつつあります。伝統とどう折り合いをつけるのか・・・。壮大な実験の場となろうとしています。


★東日本大震災被災者と熊本地震被災者へのチャリティ(花の写真贈呈)へのご協力をお願いします。
これまで多くの方々のご協力をいただき、これまでに東北地方の被災地85か所の応急仮設住宅へ140枚の花の写真をお送りすることができました。ご協力いただきました皆様には厚く感謝申し上げます。
今回から、4月の熊本地震で被災され、仮設住宅(3000戸以上あります)に入居されている被災者も対象に加え、今回撮影分も含めて花の写真を送ろうと考えております。みな様のご協力をお願いします。
1口(A3判1枚送料込み)3,000円で、寄贈者のお名前でお送りする予定です。
お問合わせ・協賛については matsunaga@insite-r.co.jp までお願いします。


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2016.8.18 upload